平成23年9月28日

カイカイキキとエスト・ウェストオークションズとの和解について

エスト・ウェストオークションズ株式会社との訴訟上の和解についてお知らせします。
平成23年9月20日付朝日新聞に掲載された記事について、多くの方からご意見とご質問を頂戴いたしました。これらを受けまして、今件に関する当社の見解を発表させて頂きます。


平成23年9月20日付 朝日新聞 asahi.com


<和解の概要>
当社とエスト・ウェストオークションズは、平成23年3月、知的財産高等裁判所において訴訟上の和解をしました(事件番号:知財高裁平成21年(ネ)第10079号)。
和解の主な内容は、①エスト・ウェストオークションズの主宰するオークションに当社所属アーティストの作品が出品される場合、著作権法第47条の2で許容されているサイズを上回るサイズの作品画像をオークションカタログ等に掲載することを許諾すること、②作品が落札された場合、エスト・ウェストオークションズは当社に対して、画像掲載の許諾料として落札価格の1~3%を支払うことなどです。


<和解の目的>
このような内容の和解を成立させることとした理由は、以下のとおりです。
欧米諸国では、美術作品が転売される度に、転売価格あるいは利益の一部をアーティストが請求できるという法制度が採用されています。この権利のことを「追及権」と呼びます。
小説家や音楽家は自分の本やCDが一部売れる度に印税を受け取ることができますが、美術作品は本やCDのように大量に複製されるものではなく、アーティストは作品を最初に販売する際に一度だけ対価を得ることができるに止まります。その後にオークションで高額で落札されたとしても、利益を得るのはオークションハウスと出品者だけで、アーティストには一切還元されません。そのため、欧米では、美術作品については、転売される度に、アーティストもその利益の一部を受け取るべきだという考え方から、追及権制度が採用されています。
わが国のアートシーンを盛り上げていくためには、わが国にもアーティストに創作の糧となる利益を還元する仕組みを導入する必要がありますが、この点でエスト・ウェストオークションズと考えが一致したことから、追及権制度と同様の内容の和解を成立させるに至りました。
当社は、この和解すなわち追及権制度と同様の仕組みが広く他のオークションハウスおよびアーティストの間に普及・定着し、最終的には法制化されることを望んでいます。


注1 和解に至る経緯
エスト・ウェストオークションズが平成20年11月に香港において開催したオークションに関連して、当社所属のアーティスト4名の作品画像を無許諾でオークションカタログやフリーペーパーなどに掲載したことから、平成22年8月、アーティストは東京地方裁判所に著作権侵害訴訟を提起しました。裁判所は著作権侵害を認め、アーティスト勝訴の判決を下しました(東京地裁平成21年11月26日判決)。
エスト・ウェストオークションズはこの判決を不服として知財高裁に控訴していましたが、平成23年3月に訴訟上の和解が成立しました(事件番号:知財高裁平成21年(ネ)第10079号)。

注2 
朝日新聞の記事は、(紙面の制約からか)正確性を欠いており、事実と異なる部分があります。例えば、記事では村上隆 「個人」が「契約」を結んだことや、アーティストに支払われる対価の料率が1%となっています。しかし、上述のように、正しくは「契約」ではなく「和解」ですし、村上隆は和解の当事者ではありません。また、料率についても、当初は1%からスタートしますが、一定期間後に3%とすることになっています。

注3 わが国の法制度の状況
わが国には、欧米諸国の追及権のような制度はありません。
それどころか、平成21年に成立した改正著作権法で新設された第47条の2は、それまでは著作権者の許諾を得なければできなかった美術作品の画像を冊子のカタログやオンラインカタログに掲載することを、一定の画像サイズ以下であれば無許諾でできることとし、アーティストの権利を弱めてしまいました。この法改正の検討過程では、欧米の追及権制度を参考にして同様の制度を導入すべきだという指摘もあったのですが、実質的な検討はなされないままでした。
この法改正は、エスト・ウェストオークションズとの訴訟が東京地裁に係属している間になされました。このことも、知財高裁における和解に大きな影響を与えました。